みかんがみっかんない

無力なアタシの、不甲斐ない毎日。

普遍的な日常に、ちょっとのロマンスを。

 

 

車が欲しい。

 

これは私が常日頃から「お金持ちになりたい」程度に抱いている雑な野望である。

いざとなりゃ実家のラパンがあるし、ていうか結局行動範囲なんて近所のローカル線に飛び乗ってどうにかなるレベルだし。

 

マイカーを維持できるほど経済力もなければ、駐車場もない。

結局緊急性がないし、買わないんだけど。

 

でも、欲しい欲しい衝動ってあるじゃないですか。

その日によって気分が違うんだけど、「え・・・なんかこれを機に買っとく?(なんの機かは不明)」っていう日もあれば「ま、いらないんですけどね」っていう日もある。

これはオンナ独特の感情の波だな~と思う。

 

じゃあ、いざ買うならどんな車がいい?

と聞かれると、私はアウトドア的な車が好きなのでJeepとかFJクルーザーとかがいい。

めちゃめちゃ山道とか走りそうなゴリゴリのタイヤで一般道路を安全運転してぇぇぇぇええええ!!!!

 

軽自動車ならジムニーが可愛い。

ちなみに角という角がぜんぶカクカクしているタイプが好きで、最近のはまるみが帯びていてそのへんの軽自動車と代り映えしないから好きじゃない。

古い中古車がいい。

 

で。

 

家の近所にめっちゃタイプのジムニーが停めてあることに、私はずっと気づいていて。

その駐車場からジムニーがない日がないんだよな。

だからきっと持ち主は全然乗っていない。

・・・え、もしかしていらないんじゃない????

いらないけど売ったりする作業も面倒だし、ずっと放置してるんじゃない????

買い手とか現れたら助かるんじゃない?????

 

ということでお手紙を書きました。

 

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「はじめまして。突然のお手紙、失礼致します。

私、近所に住んでいる山田と申します。

いつも車の前を通り、素敵なジムニーだなと思っておりました。

もしあまり使われていないようでしたら、お譲り頂けませんでしょうか。

価格等、ご相談させて頂けますと幸いです。

電話:090-〇✕〇✕ー△〇✕△

 

追伸 ご迷惑でしたら、捨ててください。」

 

我ながら素敵なお手紙である。

人は誰しも、日常にロマンスを求めている。

 

だけどそんな運命的なこと、ふつうありゃしないから映画を観たり本を読んだりして、非現実を味わう。

 

 

素敵なジムニーのあなた「はあ…。今日も深夜の帰宅だよ。最近は休みもとれてないし、あれほど好きだったドライブもできていない。俺のジムニーももうしばらく構ってやれてねえな…って、ん?なんだこれ」

 

数少ない外灯に、私の手紙はちょうどよく照らされているのだ。

彼は不信に思いながらも手紙を開く。

なんか違法でもしたか?と嫌な汗をかく。春の夜風に吹かれ、その汗は冷たく乾いた。

 

雨に濡れても大丈夫なように、サランラップで包まれた手紙をそっと彼は開く。

最初はシワの寄っていた眉間も、文章を読むにつれて徐々に緩んでいくだろう。

読み終えた頃には、胸の高鳴りを隠せず頬は少し火照り、笑いそうになる表情を我慢するはずだ。

 

大切なジムニーならば、譲ってもらうことは難しいかもしれない。

だけど、その大切なジムニーの助手席に乗る日がくるかもしれない・・・。

 

私は、素敵なジムニーのあなたにいつ訪ねられても構わないよう、髪形を気にする。

お化粧をする。

これを機に、下着も新調しようか。アウトドアが好きなあなたなら、迷彩柄はどうか。

「せっかくなのでドライブでもしますか?」「ええ」そう短く会話を交わし、照れながら車に乗り込む。

お互い探るように質問をしながら、徐々に打ち解けていく。

 

私たちは言葉にしないけれど、胸に温かいなにかが宿っていることに気付いていた。

来週末は、どこへドライブしようか・・・だなんて、平日はお互い考えている。

 

だけど、素敵なジムニーのあなたはある日突然、私を迎えに来てくれなくなる。

 

こんな夢のような毎日を続けることは不可能だと、わかっていた。

だけど現実から目を背けていた。

いつかはけじめをつけなければいけないと気づいていながら・・・、ずっと先延ばしにしていた。

 

私から彼に連絡なんてしない。

お気に入りのジムニーの助手席で、束の間の夢をみたジムニー好きのオンナとして覚えていてほしいから。

彼からの連絡は…ひそかに待っている。

 

待っているから、素敵なジムニーのあなた、ぜひお電話ください。