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みかんがみっかんない

無力なアタシの、不甲斐ない毎日。

【旅行記】仙酔島

 

私は死んだ。


社会人という病に侵され、4年の闘病生活も虚しく、先月、静かに息を引き取った。

 

生前、善い行いをした人は天国へ、悪い行いをした人は地獄へ、普通の行いをした人は中国へ行くとは昔からよく言うが、
お局さんとバトルしたり、大事なデータが保存されていたUSBを破壊したり、取引先の男の子と合コンしたりしていた私は、成仏されることなく相変わらず社会をふわふわしている。


保険証もなければ税金も払いっていない私は、まさしく幽霊である。

 

幽霊は自由である。
何月何日何曜日、そんなことは関係ない。幽霊なんだから。


そしてふらふらと辿りついたのは仙酔島

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幽霊はワープできるものだと思っていたけれど、難波発のバスで4時間かけて広島へ、そこから市バスと渡航を乗り継いでようやく到着。

 

移動にかかった費用は往復で8000円ほど。幽霊だからって免除されない。

バスもちゃんと予約して席を確保しちゃうし、クレジットカードだって使っちゃう。

 

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ここは天国だろうか。気づかぬうちに成仏されたのだろうか。

バスで火照った体を潮風が冷やしてくれる。

電車のアナウンスも意地悪な奴らの悪口もきこえない、排気ガスの臭いもしないしおっさんの加齢臭もしない。

 

幽霊だけど死にたくないので海水浴はしなかった。

幽霊だけどお腹は空くので、釣りでもして漁れたての魚でも食おうと試みたけど、なにせ幽霊なので気配がないらしく釣れなかった。

生前、会社でみんなに自分の存在に気づいてもらえなかった私は、死んでからもやっぱり魚に気づいてもらえない。

 

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幽霊は夜になると「うらめしや」と姿を現わし人々を怖がらせるものだと思っていたけれど、別に幽霊だって夜は眠いし全然寝る。

仙酔島に常設されているテントで眠り、小鳥のさえずりで目を覚ます。

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テントの横には炊事場とテーブルが設置されていて、自由に使って良い。お皿やコンロや飯盒や炭などもレンタルできる。1泊2日、2人分で10000円程度。

早朝から火を起こしてベーコンと卵とパンを焼き、朝食を頂く。生前、幽霊は香りで食事をすると思っていたけれど全然食べる。お腹空くし、ふつうに咀嚼する。

 

なかなかにリア充な幽霊である。

なかなかに健康的な幽霊である。

 

私は死んだのかと思っていた。

だけど死ぬ前のほうが死んでいた気がする。

失恋をしてドン底の日も朝は起きねばならないし、生理で体から血を垂れ流しながら取引先に愛想を振りまき、せっかくの晴れの日もオフィスに閉じこもり背中にお局さんの視線をチクチク受ける日々。

死んだように生きていた。

 

草木のこすれる音や動物が山を走る音、雨が降る前のぬるい風や、早朝の冷たい朝露まじりの風を肌で感じながら死んでいる今の方が、よっぽど生きている。

 

 もしかしたら私は死んだのではなく、今ようやく生まれたのかもしれない。

とか色々考えながらウトウトしていると、私の心の中のキャリアウーマンが「ニートは何してもニート」って言ってきた。