みかんがみっかんない

無力なアタシの、不甲斐ない毎日。

ニートだから悪い

 

クッソクッソクッソクッソニートになり、早くも1ヶ月が経つ。

驚くほどに時間の流れが速い。

 

あっと言う間とかのレベルじゃない。

っと言う間。

「あっ」という発音さえもする間のないくらいの間。

 

あれだけ会社が嫌いだったのに、さすがに1ヶ月だらけると働きたくなってくる。この平和な日々にスパイスが欲しくなってくる。ていうかお金が欲しくなってくる。

とか言いつつ働いてないけど。

 

まあこんな甘ったれたことをもんもん考えているからなのか、黙ってても世間のほうから刺激がやってくるようになった。

 

つい先日のこと。

私は3つの頃からかれこれ20年以上同じ先生に書道を教わっていて、その日もお稽古に行っていた。

私がまだ社会人だった頃、どれだけ忙しなくストレス過多な日々を生きようとも、書道のお稽古に行くと穏やかな気持ちになるものだった。

 

周りの生徒さんたちはおそらく超セレブだし(医者とかナントカ家の子孫とか)、セレブ特有の優雅さがあった。

お稽古場で流れる時間はセレブ時間で、ゆっくりとした口調で雑談が交わされ、オトナなハイレベルのジョークに皆様は「オッホッホッホ」と笑う。

皆様、時間には特に焦っていらっしゃらないのでお稽古という時間をじっくり堪能なさる。

 

人生で一度も働きに出ることなく60歳になったというお嬢様は、いつも私に「綺麗な女の人、今日もお勤め大変だったわね。はい、おまんじゅう」と言ってルビーやらサファイヤやらの指輪で華やかになった手で、私のササクレだらけのカサカサの手に和菓子を握らせてくれた。

 

まあつまり私は明らかに場違いだった。

 

だけど、ここにいると「えっもしかして私もセレブなんじゃねぇの」と束の間のセレブタイムを味わえる気がして好きだった。バーチャルセレブ。

 

今は会社も辞めて、お金の余裕はないけど時間は余裕しかないので、ちょっぴりおめかししてショッピングついでにお稽古に行く。まあ厳密に言うと、ウィンドウショッピングだけど。お金がないので。

 

「今日は先生に褒められちゃって、気分がいいわ。半紙と筆を買って、帰りましょう」

と、その日も優雅なセレブ心地に浸ってるんるんで稽古場を後にし、バスに乗った。

 

バスは非常に混み合っていた。少し気温も高かった。

汗ばんで背中やら首筋やらが不快な人々は、ギリギリの距離を保ちながらスペースを譲り合う。揺れるバスでの静かな戦争。

 

ふと、ご機嫌の老翁に目がとまった。

 

老翁は、黒地に白文字でたくさん漢字の書かれた羽織に、このような帽子を被っていた。

f:id:f_____min:20170522173807j:image

テッテレテッテテーッテレー!タケコプター!

 

そして手元の紙を見ながら、なにやら演歌を歌ったいた。なかなかの肺活量だった。

 

セレブ山田は、それを見て「お茶目ですこと」と、微笑ましい気持ちになった。そして窓の外を眺め、移りゆく景色に心奪われていた。

 

四条河原町〜、四条河原町〜」

アナウンスが流れバスが停車し、車内でどっと人々が動いた。みんなここで降りるのだ。

 通路を譲り合い、空いた席を奪い合い、狭い車内はうごめきあう。

 

あの老翁も下車するようだ。荷物をまとめ立ち上がった、その瞬間、

「どけぇぇぇえええええ!」

という怒鳴り声とともに私の右腕に鈍痛が走った。

 

「すみませぇんっ!!!!!」私は咄嗟に謝った。

老翁は去っていった。

 

「発車しま〜す」プシュゥ…

バスは発車した。車内に静寂が蘇る。

 

えっ?痛い!!!右腕が痛い!!!!

私は老翁に殴られたのだった。

揺れる車内で、呆然と立ち尽くす。

 

ただそこに立っていただけなのに、殴られた。

なんなら積極的に通路を譲っていた。

今から思えば、何がすみませんだったのか。

それにしても、誰も「大丈夫ですか?」とか言ってくれないんだな。

みんな、「おまえがニートだから悪い」と思っているのかな。そりゃそうか。

 

でも突然他人に殴ってもあの歳までなんだかんだ生きてる人がいるなら、ちょっとニートになったくらい大丈夫だな。生きていける。